平成29年3月に閣議決定された『働き方改革実行計画』に副業・兼業の推奨が明記されたことをきっかけとして、日本国内において副業・兼業普及の波が押し寄せています。今まで副業が認められていなかった公務員でさえ副業が許可されることとなり、今後ますます副業・兼業を推進する動きが広がってくることは必至です。
そんな副業の1つとして、ECサイトを運営する人が増えています。独自のファッションブランドを立ち上げる方や生産している1次産品にブランド価値を付加して販売するなど、ECサイトはローリスクで収入を得る手段となっています。
ただ、ECサイト市場に参入している事業者は多く、サイトを開設すれば売れるようになる時代はもう終わりました。これからは、大勢いる競合に対してどのように自社商品を売り込んでいくかが重要になってきます。そこで、今回はスキルなし未経験でも成功するECサイト運営の基礎について見ていきます。
ECサイトとは
まず、ECとはなにを示すのか見ていきましょう。
電子商取引とは、インターネットなどのネットワーク上で商品の売買やサービスの契約を行うことを指します。ネット通販やインターネットバンキングも電子商取引に分類され、企業同士の取引(BtoB:Business to Business)や企業と消費者間での取引(BtoC:Business to Consumer)だけでなく、フリマアプリやハンドメイド販売サイトなど消費者同士の取引(CtoC:Consumer to Consumer)でも使われています。
今回ご紹介するECサイトは、ECのなかでも自社商品やサービスをインターネット上にあるWebサイトで売買もしくは契約をするサイトのことを示します。近年では、ファッションやDVD、電子書籍、音楽ダウンロードなどのECサイトが多く見られるようになりました。
ECサイト市場が成長している理由
日本のBtoC-EC市場規模の推移(単位:億円)
(引用:経済産業省|電子商取引に関する市場調査)
上のグラフはBtoCのEC市場規模の推移ですが、棒グラフを見て分かるとおり年々規模拡大の一途を辿っています。また、線グラフの物販系EC化率も増加していることから、従来はオフラインで商品を販売していた企業もECサイト販売に参入し、急速な市場規模拡大を後押ししていることが読み取れます。これはBtoCに限ったことではなく、BtoBやCtoCも同様に市場規模が拡大しています。
なぜここまでECサイト市場が増加したのか、次のグラフをご覧ください。
情報通信機器の世帯保有率の推移
(引用:総務省|令和元年度情報通信白書)
日本国内における情報通信機器の世帯保有率の推移をまとめたグラフのうち、赤色の線(スマートフォン)をご覧ください。2010年では保有率がわずか9.7%だったものが、2018年までの8年間で7.7倍に膨らんでいます。また、タブレット端末の保有率も増加していることから、手軽で簡単にインターネットを扱える環境が整ったことがECサイト市場拡大の一因として考えられます。
ECサイト運営の基礎①|サイト構築
ECサイトで商品やサービスを販売する際、消費者は実際に見て品質を確認することはできないため、サイトの使いやすさも重要なポイントの一つとなります。購入したいと考えている商品ページへの遷移が上手くいかない場合、すぐに消費者はサイトから離脱してしまいます。せっかくサイトまで来てくれた消費者を逃さないためにも、サイトの使いやすさ=UIデザインを徹底的に追及することが大切です。
ユーザーがWebサイトやアプリを快適に使うためのデザイン
サイト構築方法
サイトを構築する方法はいくつかありますが、ここでは代表的な3つをご紹介します。
ASP
インターネット上でソフトウェアやソフトウェア稼働環境を提供できるサービス事業者です。ソフトウェアを稼働する場合、以前は各インターネット端末にソフトウェアをインストールしなければならないことから非常に手間がかかっていましたが、ASPを使うことで共有サーバを使ってインターネット上でソフトウェア稼働環境を構築でき、インターネット環境さえあればどの端末でも操作可能です。
ASPの初期費用はかなり抑えることができますが、月額のランニングコストがかかります。
Service:サービス
Provider:プロバイダー
オープンソース
ソフトウェアのソースコードを無料公開しているため、ECサイトを構築する方法のなかで最も低コストで構築できます。世界中でトップシェアを誇るWordPressもオープンソースソフトウェアです。
デメリットは、多くの利用者がいるオープンソースソフトウェアはサイバー攻撃の対象になりやすくなることです。特にECサイトは顧客のクレジットカード情報や個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策は必須です。
パッケージソフトウェア
メーカーが販売しているソフトウェア自体を購入して端末にインストールする既成のソフトウェアです。インストールした端末でしか扱えないことやセキュリティ対策のための定期的な更新作業が発生することから、現在はあまり主流ではありません。
おすすめツールはASP『Shopify(ショッピファイ)』
Shopifyは2003年にカナダで生まれたASPカートで、ECサイト市場で急激に勢力を拡大しています。ECサイト市場では、オープンソースソフトウェアWordPressに次いで第2位のシェアを獲得しています。
Shopifyの優れている点は、海外向けの販売(越境EC)にも使えるようにさまざまな言語&決済方法に対応しています。あらゆる通貨にも対応しているため、海外進出を見据えて事業展開しようと考えている方には最適のASPです。また、楽天市場やアマゾンなど外部のモール型ECサイトとも連携できるマルチチャネル販売が標準で備わっています。販売サイトを複数管理する手間が省け、在庫管理もしやすくなります。
ECサイト運営の基礎②|ECマーケティング
UIデザインの素晴らしいECサイトを作ったら、次は消費者に商品・サービス情報を届ける作業が必要です。リーチすべき顧客層の分析やECサイトのアナリティクス分析など、ECマーケティングを行いましょう。ECマーケティングは従来のマーケティングとは異なり、オンラインであるメリットを存分に生かしたマーケティング施策を実行できます。
ブランディング
ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく、企業と組織のマーケティング戦略の1つ。 ブランドとして認知されていないものをブランドに育て上げる、あるいはブランド構成要素を強化し、活性・維持管理していくこと。 また、その手法。 (引用:Wikipedia)
つまり、ブランドを形成するための施策のことを総称してブランディングと言います。デザインや機能性、商品・サービス名、さらには価格帯に至るまでがブランドを形成するための要素となります。
多数ある商品のなかからこの会社の商品でなければならない感情的な理由を作ることがブランディングであり、成功させるには消費者の感情移入を引き出す必要があります。
リスティング広告
リスティング広告とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの検索結果や関連サイトに出稿する広告で、大きく2つの種類に分けられます。
リスティング広告①|検索連動型広告
インターネットユーザーの検索キーワード(検索語句)に連動した広告を指し、リスティング広告を活用している企業の多くが検索連動型広告の手法を使っています。
広告を打ちたい商品・サービスに対して興味関心がある消費者層に直接リーチすることから、コンバージョン率(サイトでの成果)に繋がりやすいことがメリットです。
リスティング広告②|コンテンツ連動型広告
消費者が閲覧しているWebページの内容に連動した広告を表示できる手法です。検索連動型広告のように検索結果との連動ではないため、まだキーワードを検索するまで至らないけど興味を持っている消費者層にもリーチできることがコンテンツ連動型広告のメリットで、こちらもPPCの料金体系です。
SNS集客
ECマーケティングの特徴でも紹介したとおり、ECサイトの商品を消費者へ届ける際の広報媒体として、SNSとの相性がとても良いです。
SNS集客で成功している例として代表的なのが、株式会社andというメディアコマース運営会社です。メディアとECを融合したメディアコマースでは、販売チャネルを確保するためにSNSや自社サイトなどのメディアを最大限活用するマーケティング手法を行います。株式会社andは主にInstagramを活用したメディアコマースを取り入れ、ローンチ前からフォロワーを獲得。ブランドを公開したところ、わずか20分で数百万を売り上げる結果となりました。
株式会社andのマーケティング戦略分析
SNS集客は戦略次第では費用負担なしで大きな効果を生み出すことができますが、炎上によってブランドイメージ失墜するデメリットも理解する必要があります。最悪の場合には企業の株価下落にもつながります。運用ポリシーの設定やリテラシー遵守によって炎上リスクを回避しましょう。
最後に
ECサイト運営はローリスクで始められることから、副業ツールとして近年人気を博してきました。しかし、ネット上に多数存在するECサイトのなかから消費者に選ばれるためには、サイト構築やマーケティングなど、事業着手当初にコンセプトを確立することが大切です。
特にスキルなし未経験からのEC市場への参入はさまざまなハードルがありますが、戦略さえ適切に設定すれば一発逆転も狙えます。成功事例から運営やプロモーションの手法を学び、ブラッシュアップしつつ唯一無二のサイトに育て上げましょう。
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